日常・青春・恋愛

● 【書評】『ミドリのミ』(吉川トリコ)_ほのぼのとした日常だけでは生きてゆけない

『ミドリのミ』(吉川トリコ/講談社文庫)の読書感想文です。表紙からほのぼのとしたお話を想像しましたが、内容は意外とヘビーでした⋯⋯。 あらすじと感想・考察(ネタバレなし)を書きます。

『ミドリのミ』のあらすじ

小学3年生の女の子・ミドリは、父親の広とその恋人・源三と共に暮らす。 「なんで”ふつう”じゃなきゃいけないの?」 それぞれの理想の”かたち”を追い求め、もがくミドリたち。 そんな彼女たちの心情を鋭く切り抜いた6編からなる意欲作。
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『ミドリのミ』の感想と考察(ネタバレなし)

うん、この作品は面白かったです。 ほのぼのとした日常を描いた作品であると同時に、社会に蔓延する「同調圧力」について、かなり踏み込んだ描写をしています。 特に顕著なのは、あらすじを読めばなんとなくわかる通り、LGBTに対する周囲の反応です。

「LGBT」とは、性的少数者を限定的に指す言葉。レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(出生時に診断された性と、自認する性の不一致)の頭文字をとった総称

出展コトバンクより

近年は、市民権を得ているように思えるセクシュアル・マイノリティですが、やはり蓋を開けてみれば、そこには、差別の構図が見え隠れします。 この物語は、6編からなるとあらずじで述べましたが、最後の「セルフポートレイト」は、源三が主観となり、彼がどのように周りから傷つけられ、精神的な苦悩を感じていたかが、よくわかる話となっています。

この作品のとてもいいところは、前述したようなヘビーでデリケートな話題を取り扱っているにも関わらず、物語の根底に流れている空気が、とても朗らかであるところです。 そういった逆説的な物語を形成することが可能になっている要因は、主人公が小さな女の子であることだと思います。 ミドリがいるだけで、周囲の空間は弛緩し、ほのぼのとした明るさを取り戻します。 これが大人たちだけの物語だったとしたら、修羅場の連続になっていたことでしょう。 そういった意味で、“ミドリ”という役はとても重要な機能を担っていると思います。 勿論、著者のシリアスにさせない技術も、とても優れていると思います。

みなさんは、日々の生活で「同調圧力」を感じることはありますか? 多くの人はYESと答えると思います。 それは、学校であったり職場であったりするでしょう。 その前提でいくと、同調圧力がある空間で「私は私、おれはおれ」を貫くことがどれほど難しいか、身をもって感じているかと思います。 “ふつう”からはみでると、ヒリヒリ感じるあの空気。 あの気持ち悪さと居心地の悪さを形容することは、容易ではありません。

僕は今、”ふつう”の生活をしていないので、日々そういった空気を感じながら、生活しています。 そもそも、昔から”変わった子”扱いされてきたので、それには多少慣れているものの、やはり嫌な感じではあります。 個人的には、もっと多様性を認める社会になってほしいです。 でも、それは理想論だとわかっていて、なかなか変わらないと思うので、せめて自分だけは、それに屈しないような姿勢を周囲に示していきたいと思っています。この物語を読んで強くそう思うのでした。

『ミドリのミ』はこんな人におすすめ

  • 同調圧力を日々感じている人
  • ほのぼのとした日常系の話を読みたい人
  • マイノリティーの心理に興味がある人

あとがき:ミドリのミ

『ミドリのミ』(吉川トリコ/講談社文庫)の読書感想文でした。何気なく手に取った本でしたが、とても楽しく読むことができました。 話として面白いだけではなくテーマ性もしっかり持っている良書です。 ぜひぜひ読んでみてくださいね。

♦︎吉川 トリコ(よしかわ トリコ)
1977年静岡県浜松市生まれ。
愛知淑徳短期大学卒業。
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